何だか憂鬱な朝に。

 

かちゃ。と玄関を開ける。

 

独り暮らしを始めてはや2年、

いつしか私の口からこぼれるのは「いってきます」の一声ではなくて

今日の始まりこそ、まるで憂鬱さの始まりかのような

そんな風なため息。

 

外には針を刺すような寒さに、薄暗い雲、そしてとどめを刺すように降りしきる雨。

 

頭がいたい

ぜったい今日は頭の中に鉛が入ってる。

私の清らかな血液の流れを、不条理に、無条件に、残酷に

その鉛はゆっくりとせき止めている。

 

どうしてこんな天気なんだろうか。最悪だ。

今日という日がはやく終わってほしい

ふとそう思ってしまう。

 

何も天気のせいにしたいわけじゃないのに

気づけば自然と天気は悪者で、私は犠牲者になっている。

 

寒さは私をより小心者にさせ

太陽を隠す意地悪な雲は私を独りぼっちな気持ちにさせる

そして雨。私の気持ちもそれと一緒に、下に下に、流されてゆく

 

頭がいたい。

 

なにも冬の朝にたくさん雨が降らなくたっていい。

仕方なくコンビニで買ったビニール傘をさす、

カラーがない。陰鬱なモノクロの世界。

心が浮かない、沈んでゆく。

 

すれ違う人は皆、下を向いて、足早に歩いてゆく

傘で顔だって見えない。

みんなは何を考えて今日一日の始まりを迎えているんだろう

傘の裏に隠された顔を想像してみる

寒さで鉛が固まったような表情しか想像できない。

なかなか綻ばないぞって、視線も合わない人々が語り掛けてくるように感じる

 

頭の芯がズキズキする

 

風が吹くと冷たい雨私のカバンに、コートに降ってくる。

「やれやれ」

駅についてハンカチでふき取る

そして濡れたハンカチをカバンに戻す

「なんだか一緒じゃん」

 

電車の中で人の濡れた傘が私にあたって、ひんやりと雨が足に伝う

みんな怪訝そうな困った顔をしている

何かを考えているようで、実は考えてなくって、

ただ不快な気持ちを自分のうちに感じている。

そう、考えるまでもなく、ただ気分が冴えないんだ。

 

そうして電車のガラスに映った自分をみてふと思う

「こんな日を素敵に思えるならば、私はどんなに素敵な人間だろう」と

 

この状況を待ちわびている人は

カラッと晴れた天気の日よりも圧倒的に少なくて。

だからこそ、

それを楽しめる自分は誇らしい

私ってなんて楽観的なんだろう。ふと笑みがこぼれる。

なにかに勝った気持ちになる。

 

誰よりも世界の美しさを理解できるのではないか、

その可能性さえ考えてしまう。

 

「私の人生に鉛は必要ない」